2008年6月8日日曜日

赤塚論

いつぞやか、朝日新聞に載った、丸谷才一さんの赤塚不二夫氏に関してのエッセイが忘れられない。
本では「袖のボタン」に入っています。

単なる赤塚氏に対しての愛情、現代への風刺をまとめたものではない。
丸谷さんのもっている知識をすべて掘り下げて書いたような、恐ろしいと思えるぐらいの深みがある文章なんです。読むたびにその深みが一つ一つ明らかになり、そのたびに新たな発見がある文章なんですね。

いったい、この人の頭の中身はどうなっているんだろう。確かにものすごい読書家で、恐ろしいぐらいの小説家、文筆家なのですが、それだけで言い尽くせない、怖くなるぐらいの知識を持っている。日本語論も市井の下世話な話も、すべてさらりとした、水が流れるような文章ですませてしまう。だけれども、その内容は、どんな濃厚なスープも比べものにならないほどの滋養にあふれている。滋養どころか、一滴口に含んだぐらいでも、鼻血が飛び出しそうなぐらいの勢力が詰まっている、そんな文章だ。

氏のエッセイには必ず、引用先書物が紹介されている。これをすべて読んだとしても氏にはかなわないだろう。だけれどもこの赤塚不二夫論はこれからも愛読していきたい。

こういった文章を書きたい。本当になりたい。